レビュー
レビュー
    star2.5
    オープニングから、普段の細田さんのエンディング演出で驚きました。家族の歴史をダイジェストで見せるのに、写真というものはとても良いですね。 建築家が設計したオシャレだけどちょっと使い勝手の悪い家、というのもしっかり描かれていて良かったです。子ども部屋から玄関に行くために、わざわざ階段を上って下りなければならないというめんどくささ。いかにもデザイナーズ物件にありそう。誰かが脚を悪くしたらどうなるのか心配になってしまいます…。 そして始まってすぐあたり、雪片の描写が……これはもう、さすが細田さん!感動して思わず唸ってしまいました。 細かいところになりますが、後半、くんちゃんが紙パックの飲み物を飲むまでの一連の動きもグッときます。ああいう描写からキャラクターに命は吹き込まれていくのでしょう。お母さんの鬼ババ顔や、未来ちゃんに泣かれて青くなるお父さんなど、リアリティにこだわらずアニメならではの表現に振り切るところも良かったです。 細田作品お約束の、バーチャル世界でキャラの輪郭線が赤くなる描写もあって、ファンとしては嬉しいところ。文字通りの、玉のような汗も良し。(やたら息が荒いシーンが続くというのが、ここ最近無い気がするのが残念…) なにより、前作『バケモノの子』でも息を飲みましたが、やはり今作でも凄い、圧巻の風景描写。家の小さな中庭が突然あんな素敵な景色になれば誰だって、おおおおお!!と思うのではないでしょうか。これ冒険はじまっちゃうよ!と。傘を引きずる少女と、くんちゃんが歩くシーンもとても良いですね。そして、過去の海岸沿いの荒れた道路(対向車のサイドミラーがボロボロなのが憎い!)。あのシーンは、今夏バイクに乗りたくなるシーンNO.1とさせて頂きます。そして、近未来的・幻想的な東京駅。ドーム型の天窓や、なぜか巨大な鈴の下が待ち合わせ場所だったり、レトロフューチャー感が素敵です。 ------------ さて、今作はたぶん批判的な意見が多く出るかと思います。原因は、観客が予告などを観て期待しているものと、実際に監督が作るものが、ズレてしまったからではないでしょうか。 今作では、タイトルの『未来のミライ』から想像していたほど、未来のミライちゃんがメインではないというのが、観客の期待と大きくズレてしまったところだと思います。観終わって頭に残っているのはどちらかというと「過去の曾祖父」……。 予告編などから我々観客が期待していたものの一つは、未来のミライちゃんが活躍するドラえもん的な未来改変モノ、だったと思います。未来で家族が何かしらのピンチになって、ミライちゃんが幼いくんちゃんのところに何かしらの方法でやってきて、家族の歴史をさらにさかのぼり、一緒にピンチを乗り切り絆を深めて、くんちゃんも兄としての自覚に目覚める、という話。 比べて本作は、くんちゃん一人称目線での白昼夢的なイメージの断片が、たまに現実とクロスする形で進んでいきます。成長も一進一退で不安定です。こちら方が実際の子どもから見た世界に近いのかもしれませんが、観る人を選ぶように思います。たとえばああいう感じの子育てを経験したことのある人(監督のコメントに、“どこにでもある”たった一つの家族とありますが、個人的にはあんなオシャレな家族はなかなか無いと思います。どこにでもある家族はボルボに乗ってない……)や、もしかするとくんちゃんに近い世代の子が見ると、身に迫って感じられるのかもしれません。しかし、34歳独身地方住まい平社員の自分としては素直に納得できる部分が少なかったです。断片的に挿入されるエピソードにあまり脈絡がないというか。くんちゃんが電車好きというのは描かれていますが、突然寂れた駅が出てくるとか、遺失物係の担当者と時計が絵本的なキャラクターであるとか、乗せられそうになる新幹線のデザインがいかにも悪そうなデザインであるとか。合理的な説明なしでかなり直感的に登場するので、そのイメージの連続に置いてかれてしまった印象です。(くんちゃんがふだん読んでいる絵本からの発想なんだろう、とかいう理屈はつけられます) おそらく監督としては、序盤の、犬のしっぽを付けて走り回るくんちゃんと、それを見てごく自然に犬が走り回っていると見えているおとうさん、というシーンで、この映画は現実的・合理的なものではない、ということを見せているのだと思います。それだけに、あのシーンを上手く処理できない観客はそこからずっと置いていかれることになってしまいました。 ------------ 個人的に特に残念だった点は、クライマックスで未来のミライちゃんが、庭の木のことをいきなりセリフで説明しはじめてしまったところでしょうか。庭の木をそういう重要なものとして扱うなら、前半からもうちょっとフリがあっても良いのではないかと思いました。あのセリフはくんちゃんに対するセリフというより、観客に向けた説明ゼリフのような気がしました。それまで不思議なことが次々と説明なし・理屈なし・合理性なしで起こっているのをなんとか受け止めてきていた分、急に説明が始まってしまったギャップにガッカリしてしまいました。 あと、せっかくアルバムの写真を使って家族(おかあさん)の歴史が説明されるのだから、未来ちゃんが生まれてからの写真を撮る、というシーンがあっても良かったのではないでしょうか(ビデオ撮影はありましたが)。使い古された演出ですが、その写真がアルバムに加わって、そしてページがめくられると未来にもつながっていき、たとえば幼い兄妹が一緒に8の字ダンスではしゃぎあっている写真が出てきたり、寂れた駅に出てくるあの少年も(登場したときになんとなく誰だかは分かるのですか)、ああいう紹介の仕方ではなく、アルバムをめくっていくとやがて現れる、という演出の方が、観客にとっては良かったんじゃないかと思いました。 これもちょっと疑問に思ったところなのですが、お父さんがくんちゃんを保育園に連れていくシーンですれ違う、カッコいい男子学生と、それを追っかける女子学生。あとで、未来のミライちゃんにも好きな人がいるらしい、というところへつながるのは分かるのですが、ああいうフリがなくてもそれと分かりますし、登場する人物が増えてしまって余分なシーンだったと感じます。 そして、そもそもの問題として申し訳ないのですが、くんちゃんに上白石萌歌さんの声が合っていないようにも感じました。これは個人的・生理的なもので、観る人によって感じ方は違うのでしょうが。 ------------ 細田さんご本人曰く、野心作、ということなので、観客の反応も織り込み済みなのだと思います。おおかみこども以降、細田さんは分かりやすいエンターテイメント色よりも、家族を作るという一筋縄ではいかないものをなんとか作品にしようとしている風に見えます。細田さんはご自身の経験を作品に反映されていく方なのでしょう(女系家族が多いのも、たぶん細田さんのご家庭がそうなのだろうと勝手に考えています)。 いまはだんだんと観客の期待からズレていっているところですが、たぶん、一周して戻ってくるとか、ズレすぎて逆にすごいことになる、ということがあると思います。 なにより先にも書いたように繊細な風景描写など、細田さんの作品でしか観れないものもあるので、細田作品はこれからも観ていくつもりです。
    290
    子供を中心に描いたアニメーションです。 方向が違えばなかなかのアニメになったかもしれないのにもったいない映画ですね。 まず脚本がダメで全く話に引き込まれず、大して重要ではない話をダラダラと続けます。 そしてみんなが1番感じる「違和感」下手な女優、俳優の積極的起用。 お父さん役の星野源、お母さん役の麻生久美子、そして1番問題がくんちゃん役の上白石萌歌。 この3人が圧倒的に実力不足で、映画で多くの時間を占める3人の演技は致命的です。 個人的には上白石さんは下手だけど味があるので、ハウルの倍賞千恵子・アリエッテイの大竹しのぶよりはまだ我慢できました。 逆に素晴らしいところはお金のかかっていそうな今風の作画と子供のディテールや動きですね。 子供の動きはかなり良いと思います。 この映画を観て感じたのは監督はもっと真剣に映画を作って欲しいですねー パパはいつも自転車の工具持ち歩いてるの? いい加減だなぁ〜
    150
    【4次元映像美を体感する映画】 過去や未来を行き来する4次元の描写に、細田守監督ならではの映像美が凝縮されて、見たことも無い映像体験。さらに普遍の家族愛が映画の芯をしっかり形作っている。 ◆ 『サマーウォーズ』の細田守監督最新作。声の出演に上白石萌歌、黒木華、星野源、役所広司、福山雅治も。OPとEDテーマは山下達郎が担当し『サマーウォーズ』以来の監督とのタッグ。88の国と地域での配給が決定(2018年5月現在)している。 ◆ 妹が生まれたばかりの甘えん坊の“くんちゃん”は、自分のことを「お兄ちゃん」と呼ぶ、“ミライちゃん”と出会い、時をこえた家族の物語へと旅立つ事に。さまざまな冒険を経て、成長を遂げながら“くんちゃん”が最後にたどり着いた場所とは?“ミライちゃん”がやってきた本当の理由とは― ◆ 家族愛と、少年の成長が微笑ましいほっこり映画。細田守ワールドの映像美ももちろん健在。夏休みに家族で見る映画として最適だと思う。 家族あるあるが満載で、親近感がわく。隙があれば部屋を散らかしたり、妹に嫉妬してしまうくんちゃん。思わず怒ってしまうお母さん。家事でドジを連発してしまうお父さん。そのどれもが、どこの家族にでもありそうな、自らの環境に置き換えて見れる人は多いと思う。 主人公のくんちゃんはもちろん、その家族たちも映画を通して穏やかに成長していく様がとても微笑ましい。おもちゃで妹に殴りかかってしまうくんちゃんが、ものを与えるようになる変化も可愛かったし、小言を言い合っていた夫婦がお互いを褒めるシーンも素敵だった。 そしてなんと言っても、細田守監督らしい映像美。誰も見たことがない映像を具現化する事に長けているとつくづく思う。大群のメダカ(?)や、時間のインデックスを探すラスト含め、この映画のキーである、過去や未来へのタイムスリップシーンにそれが多用されていて、都度グッと映画に引き込まれる感覚だった。 ただ… 何というか、小さくまとまった感がある気がする。細田監督の過去作から考えると、あとタイムスリップするという、いくらでも自由に映像を創り出せる設定からすると、期待する映像美はもっともっと欲しかったし、話の壮大さは期待したほどでは…。 ストーリーはぶっ飛んでてもいいので、監督に自由に映像を作り込んでもらえる、キレッキレな次回作を期待したい。
    100